日本で催される様々なお祭りの中で、毎年1月13日~15日に行われる野沢温泉村の道祖神祭りも一押しだ。日本三大火祭りにも挙げられ、1993年12月には国の重要無形文化財に指定された日本有数のお祭りである。
300年以上にわたる伝統行事で、村人たちにとってこの祭りは、必ず仕事を休んで参加するほど並々ならぬ情熱がある。参加して初めて一人前の男として認められる、いわば通過儀礼のような風習があるのが特徴だろう。近年では、国内だけでなく海外から見に来る外国人観光客も増えている。
この祭りのクライマックスは、本厄を迎えた25歳・42歳の村人男性たちと、その他の村人たちによる、社殿での火付け役と火消し役との攻防戦だ。夜を徹して高さ10m以上の社殿が作り上げられる。
社殿の上には42歳の男達が乗り、社殿に向かってたいまつや松の枝の束を持って村人たちが社殿に火をつけようとする。そして、25歳の村人たちが社殿の前に立ちはだかり、身体を張って火消しをすることで社殿を守ろうとする。
火付け役の村人たちが火のついたたいまつを叩きつける様と、次々と叩きつけられてくる激しい火を身一つで防ごうとする命がけの攻防は、大人の本気度と激しさが最も伝わってくる瞬間だろう。やがて社殿に火が燃え移り、焼き尽くされて壮大な火柱となった社殿が倒れていく様も圧巻だ。
クライマックスを迎えた後、明け方まで燃え続ける残り火で、持参した餅を焼いて食べる。こうして村の平安や厄払い、良縁や子供の健やかな成長を願うのだ。祭りを通して火に対する畏敬の念や魅力を存分に味わうことのできる祭りといえよう。